人気ブログランキング | 話題のタグを見る

こんな新聞毎日読んでいます。


by shinsyu007

平成21年4月22日の斜面

裁判官が切る黒い法服を初めてまとってみた。近くの裁判所で開かれた見学会に参加した折にである。絹製なので思いのほか軽い。黒には、どんな色にも染まらず、公正な判断を―の意味が込められているという。

法服のまま裁判席に座り、法廷を見渡した。裁判官はこうして、被告や弁護人、検察官と向き合っているのか―。そう思うだけで、おのずと厳粛な気持ちになる。裁判員制度の裁判官は平服でよいというけれど、緊張の大きさがある程度は想像がつく。

十一年前の毒物カレー事件で、殺人罪に問われた女の死刑が確定することになった。もし自分が裁判員だったら、どんな判断をするのか―。こんな思いのよぎる裁判の一つだった。被告の自白や目撃証言の決定的な証拠を欠いている。犯行の動機もはっきりしないままだ。

最高裁は一審、二審と同様、有罪とした。積み重なった状況証拠から、女のほかに犯人はあり得ない―との判断だ。ヒ素の入ったカレーを食べた近隣の四人の命を奪い、多くの住民を苦しめた事件である。有罪となれば死刑は当然の量刑なのだろう。

けれど、もし裁判員ならば、と考える。女が犯人との確信が持てるのか、死刑を下せるのか・・・。心にもやもやを抱えたまま、裁判所を後にする自分が思い浮かぶ。人を裁くことの重さなのだろうか。裁判員制度の開始まで一カ月を切った。

法服は本当に着たのかしら。
by shinsyu007 | 2009-04-24 19:20 | 斜面